健康診断などで得られた検査値を考える際に、ひと昔前は「正常値」に比べて、自身の検査値が高いのか低いのかを考えるのが普通でした。
しかし現在は、『正常値』というものは存在しません。
「そんなはずはない!! 」
とお思いの方もいらっしゃるかと思います。会社で受けた健康診断結果の表には、自分の結果の隣に『正常値・範囲』が書かれていたじゃないか。と
昔、正常値をオーバーしっちゃったから、要精密検査の通知を受けとったこともある
とお思いの方も多いかと思います。
でも、よくよく見てみてください。最近の健康診断結果では『基準値・基準範囲』と書かれているかと思います。
・・・ん?
そうなんです。『正常値」』が『基準値』に名前が変わっているのです。
でも、単に名前が変わっただけでないのです。
基準値とは
ある検査の値の正常値を決めるとき
理想は
すべての健康人を集めて検査を行い平均値を求めて正常値とすることができます。
正常範囲は検査した健康人の最小値から最大値の範囲となります。
しかし現実は大きな2つの問題があります。
まず1つ目は
限りある人数、かつ健康と思われる人の検査から基準値を求める必要があることです。
この健康であると思われる人がポイントで、健康な人の定義が難しいため、結果として現在病気がない、あるいは病気がないと思っている人の協力を得て、検査の基準値や基準範囲を求めます。
そのため、実は病気の人を含んでいる可能性のある基準値や基準範囲を用いることになります。
2つ目の問題は
検査値は個人差があることです。
何の検査をするかによりますが、一般的に検査値は個人差があり、体格、性別、年齢、職業のほか、同じ人であっても体調だけでなく、検査した日、時間、季節によっても変わります。当然、検査する間の行動によっても強く影響を受ける検査もあります。
そうすると誰のいつを基準とするかの問題が生じます。
この2つの問題は完全に解決することが難しいのですが、統計学を用いることで対処しています。
基準値の決め方
実際の基準値・基準範囲には2つの問題があることをお話ししました。しかし、問題があったとしても基準は決めておく必要があります。
基準値の求め方は統計学的な考え方を基にしています。
健康と思われる人(健常者)の集団から得られた検査値から、平均値と標準偏差(SD)を求めます。得られた平均値が基準値、平均値 ± 2×SD の範囲を基準範囲と定義されます。
求められた基準範囲を用いると、統計上、健常者の約 95 %が含まれることになります。この方法は、健常者から得られた検査値が正規分布する場合に用いられます。
正規分布しない場合は、統計学的な処理を行うか、検査値を並べて順位付けし、検査値の 95 %が含まれる範囲と中央値を求める必要があります。
100 % ではないんです。
基準値の使い方
せっかく求めた基準値・基準範囲も正しい使い方を知らないと誤解や勘違いになってしまいます。
検査の結果、自身の検査値が基準範囲ぎりぎりに収まっている 「よかった!」
基準範囲をちょっとだけ超えてしまった 「ショック・・」
そうではありません。
検査値は個人差があることを覚えておかなくてはいけません。あくまで基準値・基準範囲は他人の結果から求めてあるので、必ずしも自分に当てはまるわけではありません。基準値を1超えてしまったら、すぐ病気ということでもないです。
大切なのは自分のいつもの検査値と比較してみることです。
おすすめは、かかりつけ医に検診結果を相談できるようにしておくことです。かかりつけ医であれば、医学的な観点からお一人お一人に合わせたアドバイスをしてくれるはずです。
・・・ そうは言っても、検査結果が基準範囲を超えていたら、会社からお知らせが来ますよね。
「病院で精密な検査を行ってください」
もしこのお知らせを受けとった方は自分の体の中を知るチャンスです。ぜひ、かかりつけ医へ。
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